静かに、ナイフを引き抜いた。
それは微かな光を集めて、きらりと輝く。
彼女は、目を細めて笑った。私は、それを見ている。
その、ナイフを握った手は、これっぽっちも震えていない。
怖くはない。怯えはない。
むしろ、喜んでいる。
楽しんでいる。
恍惚と、快感。
私は、誰?

「さようなら、シータ」

光は、私を生かしてくれた。
意味など無い。
理由など無い。
何も無い。
無垢な行動。
純真な行動。
あるのは、その行動のみ。
美しく、洗練された、人間だけの行動。
光は、それを与えてくれた。
「泣かないで」

「泣かないで」

少女は、私の右目をそっと舐めた。

「泣かないで」

怖くはない。
怖くはない。
私は、神なのだから。



『鋭利なナイフと衝動の理由』
 

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