お前に裁きが下るだろう。
憎憎しげにそう吐き捨てると、男は可笑しくて堪らないといった表情で高らかに哄笑した。

「人を裁けるモノなんてないのさ」
男は謳うようにそう言った。

だが、ならば法律はどうなる? 裁判は?
あれらの全ては無意味なのかと問うと、男は無意味だと断言した。

「あんなモノは所詮、人が勝手に作ったものだ。なぜ従わなければならない?」
音小幅化にしたような目で此方を見ると、笑いながら言う。
「人に人が裁けるものか。下らない。そんなことを思っている時点で人間は傲慢だ」

ならば神は。
全知全能なる神。我らを造り給い、救い給える神。
神ならばお前に裁きを下せるだろう。

「できるものか。あんなものは所詮役立たずの偶像だ。
祈ったところで何も起こらない。そんなものはいないのだからな」

信じるものか。それなら誰がお前に裁きを下すのだ。こんなことが罷り通っていいわけがない。
悪は裁かれ、善は救われると。そう教えられてきたというのに!
「信じたくなきゃ信じなくてもいい」
男は嘲る目で、子供でもあやすかのように、愚者を諭すかのように優しくかけてきた。声をかけてきた。

「神を信じたければ勝手に信じればいい。だが、俺がそれに応えてやる義理はない」
男はそう言って鋼色に鈍く、冷たく輝く銃を構えて言う。

「さあ、お前の信じる神に祈れ。本当にいるなら、奇跡くらいは起こしてくれるかもしれない」

気がついた瞬間には、私の眉間は何か熱いものが貫いていた。



『無能の神に祈りを』
 

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